CHAPTER 01
派遣先企業、派遣労働者、及び派遣元の関係は?
「労働者派遣」の関係では、派遣先企業と派遣労働者との間に指揮命令関係がありますので、派遣先企業が派遣労働者に対して仕事の指示や服務指導等を直接行うことができます。ただ、雇用関係は派遣労働者と派遣元との間にのみ在りますので、派遣先企業が派遣労働者に対して、雇用主が行うべきである下記のようなことを行うことができません。万一、派遣先企業がこれらのことを行いますとトラブルにつながります。
派遣先企業に権限がないこと(トラブルにつながること)
- 選考して受け入れを決定すること
- 就業場所の異動を命じること
- 昇給等、賃金を決定すること
- 契約の更新、終了の意思確認を行うこと
CHAPTER 02
「派遣」と「請負」・「業務委託」との違いは?
派遣は「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」(法第2条)と定義されており、派遣労働者との指揮命令関係は派遣先企業にあります。
これに対し、請負や業務委託は、労働者との雇用関係と指揮命令関係が、いずれも請負(受託)業者にあります。契約の名称が請負や業務委託であっても、注文主が請負(受託)業者の労働者に直接指揮命令している場合は、適正な請負といえない(偽装請負)と判断され、派遣法の適用を受けたり、職業安定法第44条で禁止されている「労働者供給事業」に該当したりする場合がありますので注意が必要です。
※契約の名称が「業務委託」であっても、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」の適用については、「請負」と同じように取り扱われます。
関連の指針と疑義応答集
なお、指揮命令関係や業務の独立処理等、派遣と請負(業務委託)の違いを明確にするため、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年4月17日労働省告示第37号)が定められていますが、厚生労働省から疑義応答集が公表され、具体的に説明されています。
「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」 (昭和61年4月17日労働省告示第37号) (最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)(PDF形式)
「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」(PDF形式)
「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」(第2集)(PDF形式)
CHAPTER 03
派遣禁止業務とは?
労働者派遣法及び施行令等によって、次の業務は労働者派遣が禁止されています。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関係業務
- いわゆる「士」の業務(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士 等)
- 人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務
CHAPTER 04
「派遣契約」で定める事項は?
派遣契約の当事者は、契約の締結に際し派遣法第26条に基づき、個別の派遣就業条件などに関する事項を、都度、具体的に定めなければならず、その契約の内容を書面に記載しておかなければなりません(則第21条第3項)。
また、厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」では、「労働者派遣に関する契約については、恒常的に取引先との間に労働
者派遣をする旨の基本契約を締結し、個々具体的に労働者派遣をする場合に個別に就業条件をその内容に含む個別契約を締結するという場合があるが、この場合、法第26条の意味における労働者派遣契約とは、後者の個別契約をいうものである。」とされています。
CHAPTER 05
労働者派遣契約書には印紙が必要か?
派遣に関する契約書には収入印紙を貼付する必要はありません。
「印紙税法」では、「請負に関する契約書」(2号文書)は課税文書であると規定していますが、派遣に関する契約書は、この「請負に関する契約書」には該当しません。
印紙税法上、派遣に関する契約書は、“委任に関する契約書”として不課税となります。
なお、派遣の基本契約書は「継続的取引の基本となる契約書」(7号文書)に該当するのではないかとのご質問をいただくことがありますが、派遣の基本契約書も、7号文書には該当しません。したがって、労働者派遣基本契約書および労働者派遣契約書(個別契約)ともに、収入印紙を貼付する必要はないということになります。
CHAPTER 06
派遣期間制限とは?
労働者派遣法では(1)派遣先の同一の組織単位において3年を超える継続した同一の派遣労働者の受け入れができない「個人単位の派遣期間制限」制度と、(2)派遣先の同一の事業所において3年を超える継続した労働者派遣の受け入れができない「事業所単位の派遣期間制限」の制度の2つの派遣期間制度が定められております。なお、「事業所単位の派遣期間制限」については、派遣先の従業員過半数労働組合又は従業員過半数代表者の意見聴取手続きを適正に行うことにより派遣受入期間の延長が可能です。
「個人単位の派遣期間制限」と「事業所単位の派遣期間制限」
2015年の法改正の前まであった、業務区分ごとの派遣期間制度は廃止され、現行の派遣期間制度になりました。
旧法(2015年法改正前)
業務区分ごとの派遣期間制度
- 派遣期間の制限がある「業務」(いわゆる自由化業務など) ⇒ 派遣先最小単位部署ごとに最長で3年間
- 派遣期間の制限がない「業務」(いわゆる政令26業務など)⇒ 期間制限なし
改正法
業務区分ごとの派遣期間制度は廃止
→NEW 業務内容は問わない2つの期間制限
- 個人単位の期間制限
- 事業所単位の期間制限
新たな派遣期間制度に関するよくある質問
CHAPTER21 改正派遣法の「個人単位の派遣期間制限」と「事業所単位の派遣期間制限」とは?
CHAPTER 07
「個別派遣契約」で派遣労働者の氏名を特定することは可能か?
派遣契約では、派遣労働者の氏名を特定することはできません。
これは、派遣契約の目的が派遣就業条件等を取り決めることであって、“誰を派遣するか”を決めるものではないからです。
仮に、派遣契約で派遣労働者の氏名を特定することになった場合は、誰を派遣するかということが派遣先と派遣元の合意事項になり、派遣法第26条第6項(派遣先による派遣労働者特定行為の禁止)違反にもつながります。
派遣労働者の氏名は、派遣契約で定めるのではなく、派遣元が派遣するスタッフを決定した後、派遣法第35条に基づき、性別、社会保険の加入状況等とともに、派遣先に通知することになっています。
CHAPTER 08
派遣先が受け入れる派遣労働者を選考することは?
派遣法第26条第6項は、派遣先が派遣受入れにあたり、派遣労働者を選考し、特定する行為を、紹介予定派遣を受入れる場合を除き、禁止しています。
派遣労働者を採用、配置するのは、雇用関係のある派遣元事業主の固有の権限であり、もし、派遣先が受入れる派遣労働者を特定するような行為を行うと、派遣先と派遣労働者の間に雇用類似関係が成立すると判断され、職安法第44条で禁止されている労働者供給事業に該当するおそれがあるためです。
なお、紹介予定派遣については、平成16年3月施行の派遣法改正により、派遣先による派遣労働者の特定行為が解禁されましたが、派遣先は派遣先管理台帳に、実施した派遣労働者の特定行為の内容と選考基準等を記録し、保管する必要があります。
禁止されている派遣労働者特定行為の典型例は?
次の1~4のような行為が、禁止されている、派遣先による派遣労働者特定行為の典型例です。
- 派遣予定者と事前に面接を行い、派遣受入れを派遣先が決定すること。特に、複数の派遣予定者と面接を行い選考すること。
- 派遣先が派遣予定者に試験を実施し選考すること。
- 派遣先が派遣元へ履歴書を要求し、選考すること。
- 派遣依頼に際し、派遣先が性別・年齢等の条件をつけること。
派遣スタッフの希望で行われる「事業所訪問」とは?
派遣労働者の中には、派遣される前に、派遣先の職場を自ら確認し、業務内容の説明を受けた上で、派遣の仕事を引き受けるかどうかを決めたいという希望もあり、平成16年3月施行の派遣法改正により「派遣先が講ずべき措置に関する指針」、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」が改正され、派遣労働者又は派遣労働者になろうとする者が、自らの判断の下に行う派遣先事業所訪問、及び履歴書の送付は、禁止されている派遣先による派遣労働者の特定行為(事前面接)に該当しないこととされました。
ただし、派遣先及び派遣元は、事業所訪問を派遣労働者等に求めてはならないことになっていますので、注意が必要です。
CHAPTER 09
「派遣先責任者」の資格や選任方法は?
派遣先は、派遣事業所ごとに専属の派遣先責任者を、派遣先の雇用する労働者の中から選任しなければならないことになっています(法第41条、法施行規則第34条第1項)。
この場合の、「専属」とは派遣先責任者の業務のみを行うということではなく、他の事業所の派遣先責任者と兼任しないという意味とされています(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)。
また、株式会社および有限会社の役員は派遣先責任者になることができますが、監査役は業務の性格上、派遣先責任者になることはできません(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)。
派遣先責任者の資格については特に規定はありませんが、
(1)労働関係法令に関する知識を有する者であること、
(2)人事・労務管理等について専門的な知識又は相当期間の経験を有する者であること、
(3)派遣労働者の就業に係る事項に関する一定の決定、変更を行い得る権限を有する者であること等、派遣先責任者の職務を的確に遂行することができる者を選任するよう努めることとされています。(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の13)
なお、派遣先責任者の選任を怠った場合には、派遣先は、30万円以下の罰金に処せられることがあります(法第61条第1項第3号)。
禁止されて派遣先責任者の選任方法
派遣先が選任しなければならない派遣先責任者の人数は、派遣先事業所ごとに、受け入れ派遣労働者100人につき1人以上とされています。
なお、派遣先事業所の派遣労働者の数と派遣先が雇用する労働者の数の合計が5人以下のときには、派遣先責任者を選任する必要はない(法施行規則第34条第2号)とされています。
CHAPTER 10
「派遣先管理台帳」の作成・記載・保管は?
作成・記載
派遣労働者の就業日、就業時間等の実態を的確に把握する等の目的で、派遣労働者が就業する事業所ごとに派遣先管理台帳を作成し、所要の事項を派遣労働者ごとに記載しなければなりません(法第42条、法施行規則第35条第1項)。
なお、派遣先事業所の派遣労働者の数と派遣先が雇用する労働者の数の合計が5人以下のときには、派遣先管理台帳の作成、記載は必要ないとされています(法施行規則第35条第3項)。
保管
派遣先管理台帳は、派遣期間終了日(派遣契約が更新された場合は、更新後の派遣期間終了日)から起算して3年間保存する必要があります(法第42条第2項、法施行規則第37条)。
CHAPTER 11
派遣先の「労働基準法」・「労働安全衛生法」等の責任とは?
労働者派遣では、派遣先が派遣労働者に対して具体的な指揮命令を行い、派遣就業環境の管理を行いますので、派遣法では、労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法、作業環境測定法、男女雇用機会均等法、及び育児介護休業法の一部事項については、派遣先が使用者とみなされ、責任を負うことが定められています。
CHAPTER 12
時間外労働、休日労働の取扱いと36協定の適用は?
派遣労働者の労働時間に関しては、業務の指示を行う派遣先が使用者として労働基準法上の責任を負うことになっていますが(法第44条)、派遣先が派遣労働者に時間外・休日労働を命じるには、派遣元において「36協定」が締結されていることが条件となり、その「36協定」で定められた時間数・日数の範囲内で、派遣先は派遣契約に基づき時間外・休日労働を命じることができます。したがいまして、派遣先は、派遣元で締結された「36協定」の内容を、予め確認しておく必要があります。
長時間労働による労働者の健康障害を防止するため、尚一層の措置が求められておりますので、派遣先におかれましても派遣労働者の時間外労働削減の措置を講じていただくようご配慮ください。
CHAPTER 13
「個別派遣契約」に定める以外の業務を命じたり、契約内容を変更することは?
派遣契約を締結する際には、具体的な派遣業務内容、派遣期間・時間などを定めなければならず(法第26条)、また、派遣法は派遣先に対して「派遣契約の定めに反することのないように適切な措置」を講じるよう義務づけています(法第39条)。
したがいまして、派遣先が派遣労働者に指揮命令を行い、就業させることができるのは、あくまでも派遣契約で定められた業務内容の範囲であり、契約業務以外の仕事を派遣先が命ずることはできません。
また、派遣先が派遣労働者と直接協議し、派遣契約の条件変更や、終了するような手続きをとると、派遣先が、本来は権限のない、雇用主が行うべき行為を行うことになり、結果、派遣労働者との間でトラブルが発生することにつながりますので、やむを得ない事情がある場合は、できるだけ早く派遣元に相談してください。
CHAPTER 14
「個別派遣契約」を更新又は終了する場合に注意することは?
更新又は満了する場合の注意点
- 派遣先は、派遣労働者との間に雇用関係はありませんので、直接、派遣労働者と契約の更新や終了を取り決めることはできません。雇用に類似する関係が生じたというような誤解が生じ、トラブルの原因になりますので、派遣先が直接、派遣労働者と交渉を行わないようにしてください。
- 派遣法は派遣契約の自動更新を禁止していますので、派遣契約を更新するか、又は、更新をせず終了するのかということを、その都度、派遣先と派遣元の間で取り決め、更新する場合には、新たに期間を定めて派遣契約を締結する必要があります。
更新を繰り返したり、比較的長く継続していた契約を終了する場合は?
- 派遣契約の更新が繰り返され、同一の派遣労働者を1年以上受け入れているような場合には、派遣労働者の雇用安定と、派遣先、派遣労働者及び派遣元間の円満な手続きのために、派遣契約期間の更新可否確定を、おそくとも30日以上前には完了していただけるよう、ご配慮ください。
- 派遣契約を更新せず、期間満了をもって終了することは、派遣契約の中途解除にはあたりませんが、派遣元は厚生労働省が策定した『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準』にしたがい、契約を3回以上更新し、又は、1年以上継続勤務している派遣労働者の契約が更新されず終了する場合には、30日以上前に予告するようにしなければなりません。
CHAPTER 15
派遣労働者からセクシュアルハラスメントの相談があった場合は?
派遣法第47条の2、派遣法第47条の3により、男女雇用機会均等法及び育児介護休業法のセクシュアルハラスメント、いわゆるマタニティハラスメント等の防止等に関する事業主責任を、派遣先も負います。(2020年6月からは、いわゆるパワーハラスメントの防止等に関する事業主責任を派遣先も負うことになります。)
このため、派遣労働者から派遣先に直接、セクシュアルハラスメントの相談があった場合には、派遣先は、派遣先社員からの相談と同様に、迅速、かつ、適切な対応が求められることになります。
具体的な対応としては、厚生労働省から事業主が講ずべき措置に関する指針が示されており、万一、派遣労働者から派遣先就業上のハラスメントの相談を受け付けた場合は、プライバシーを保護するために必要な措置を講じつつ、派遣先と派遣元が連携して解決を図ることを定めた、派遣法の苦情処理制度にしたがい、迅速にご対応ください。
なお、派遣労働者から受け付けた相談内容及び対応状況等は、派遣先管理台帳に記録して派遣終了後3年間、保存していただく必要があります。
事業主が雇用管理上講ずべき措置(厚生労働省指針) 10項目
事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
- セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備く継続していた契約を終了する場合は?
- 相談窓口をあらかじめ定めること。
- 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
- 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
- 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
- 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
上記1~8までの措置と併せて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
- 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
CHAPTER 16
派遣労働者の妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止とは?
男女雇用機会均等法は、男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図ること等を目的として、母性を保護し、女性が働きながら安心して出産できる条件を整備するため、妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理に関する規定を定めており、男女雇用機会均等法第9条第3項は、事業主が、労働者の妊娠、出産、産前産後休業を取得したことや、厚生労働省令で定められている事由で不利益な取扱いをすることを禁止しています。
ポイント
派遣先にも、派遣法第47条の2により男女雇用機会均等法第9条第3項が適用され、派遣労働者が妊娠・出産・産休取得したこと等厚生労働省令で定められている事由を理由として、不利益な取扱いをすることは禁止されます。
たとえば、派遣先が派遣労働者の妊娠・出産、または産前産後休業取得を理由に派遣労働者が派遣就業可能であるにもかかわらず、
(1)派遣契約の更新を取りやめること、
(2)派遣先が派遣会社に派遣労働者の交代を求めること
が禁止されています。
CHAPTER 17
労災保険の適用と業務上災害・通勤災害が発生した場合の手続きは?
派遣労働者の労災保険は派遣元で加入していますので、派遣元を通じて労災保険の請求手続きを行います(基発第383号)。
派遣先は、業務上災害の請求手続きに際して現認確認の協力し、また、休業等が発生した場合には「労働者死傷病等報告書」を所轄労働基準監督署へ提出し、その写しを派遣元に提供することになります(労働安全衛生規則第97条、則第42条)。
CHAPTER 18
「個別派遣契約」を中途解除する場合は?
派遣先と派遣元間で締結される派遣契約と、派遣労働者と派遣元間で締結される派遣雇用契約は別個のものですが、派遣契約が中途解除されると、派遣元と派遣労働者との雇用関係にも大きな影響を及ぼし、雇用主として労働法上の種々の制約を受ける派遣元としては、派遣労働者に急いで他の仕事を確保するなり、休業手当などの措置を講じなければなりません。
平成24年の派遣法改正により、労働者派遣契約の中途解除によって、派遣労働者の雇用が失われることを防ぐため、派遣先都合により派遣契約を中途解除する場合の、(1)派遣労働者の新たな就業機会の確保、(2)休業手当などの支払いに要する費用の負担等の措置をとることが、派遣先の義務として定められました(法第26条第1項第8号、法第29条の2)。また、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第138号)でも、(1)労働者派遣契約の解除について派遣元へ事前に申し入れを行い合意を得ること、(2)派遣先における就業機会の確保を図ること、(3)派遣労働者への賃金補償を目的とした、派遣元への損害賠償を行うこと、(4)派遣元から請求があった場合に中途解除の理由を明示すること等が定められています。当社では労働者派遣基本契約において、派遣先の都合で派遣契約を中途解除される際には、その中途解除された派遣契約の残余期間に応じた額の負担をしていただく旨を定めております。万一、派遣契約を派遣先の都合で中途解除せざるを得ない事態が発生する場合には、派遣先は派遣労働者に直接伝えることなく、派遣元に、速やかに連絡し、これらの趣旨に沿って派遣先、派遣元双方の連絡を密にして対応を決定していくことが求められます(派遣先が派遣労働者に直接、派遣契約の中途解除について通知するとトラブルになりますので、ご注意ください)。
派遣先が講ずべき措置に関する指針
派遣先が講ずべき措置に関する指針 (平成11年労働省告示第138号) (最終改正 令和2年厚生労働省告示第346号)(PDF形式)
CHAPTER 19
労働契約申込みみなし制度とは?
労働契約申込みみなし制度は、派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して、派遣労働者の派遣会社における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込み(直接雇用の申込み)をしたものとみなされる制度です。
違法派遣とは
- 派遣労働者を禁止業務に従事させること
- 無許可又は無届出の派遣会社から派遣を受け入れること
- 派遣期間制限に違反して派遣を受け入れること
- いわゆる偽装請負等
※派遣先が、上記違法派遣に該当することを知らず、かつ、知らなかったことについて過失がなかった場合は、労働契約申込みみなし制度は適用されません。
労働契約申込みみなしとは
- 申し込んだとみなされる労働契約の条件は、違法行為の時点における派遣会社と派遣労働者との間の労働契約上の労働条件と同一の内容となりますが、労働契約のみならず、口頭の合意や就業規則等に定めるものも含まれるとされています。
- 申し込んだとみなされる労働契約期間に関する事項(始期、終期、期間)も、派遣会社と派遣労働者との間の労働契約に書かれた内容がそのまま適用されます。
- 派遣労働者が申込みを承諾しなかったときは、労働契約は成立しません。(「雇用みなし」ではなく「申込みみなし」です)
平成27年7月10日付の厚生労働省職業安定局長通達(職発0710第4号)では、「労働契約申込みみなし制度」を定める派遣法第40条の6の規定は、「民事的効力を有する規定であり、その効力が争われた場合については個別具体的に司法判断されるべきものであるが」とした上で、制度の趣旨及び行政解釈が示されています。
『労働契約申込みみなし制度について』(職発0710 第4号)(PDF形式)
「労働契約申込みみなし」の期間と労働条
期間:派遣先は、違法状態が終了した日から1年間は労働契約の申込みを撤回することができません。
労働条件:派遣先が申し込んだとみなされる労働契約の条件は、違法派遣が発生した時点における派遣元との労働条件(賃金、雇用契約期間など)と同一になります。
例 派遣元⇔派遣労働者が有期雇用の場合
いわゆる「偽装請負」の場合
POINT
いわゆる「偽装請負等」の場合は、労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で、請負契約(委託契約)を締結し、いわゆる偽装請負等の状態となった場合(労働者派遣の役務の提供を受けた場合)は、労働契約申込みみなし制度の適用を受けます。
Check
労働契約申込みみなし制度の適用には、法の適用を「免れる目的」が必要で、単に偽装請負等の状態になったことのみをもって、偽装請負等の「目的」があるとはされません。
契約当初に法の適用を免れる「目的」がなかった場合でも、受け入れている間に「いわゆる偽装請負等」に該当するという認識が生じた場合
→認識した時点が1日の就業開始時点であればその日以降、1日の途中であれば翌就業日以降に「指揮命令」を行った時点が申込み時点となる。
(労働契約申込みみなし制度に関する行政解釈)
CHAPTER 20
離職した労働者を派遣労働者として受け入れる場合は?
本来直接雇用とすべき労働者を派遣労働者として受け入れることで、労働条件が切り下げられている可能性があるとして、派遣先を離職して1年以内の労働者を、派遣先が受け入れることは禁止されています(法第40条の9第1項)。具体的には、派遣受入前1年以内に正社員、契約社員、アルバイト等の雇用形態を問わず、派遣先のどこかの事業所で(派遣就業予定の事業所に限りません)1日でも直接雇用されていた人の派遣受け入れが禁止されました。
また、派遣元から法第35条に基づく「派遣先への通知」を受けた派遣先が、その派遣労働者の派遣を受け入れると、離職後1年以内の労働者の派遣受入禁止に抵触するときは速やかにその旨を派遣元に通知していただくことになりました(法第40条の9第2項)。
※平成27年の法改正により条番号が「40条の6」から「40条の9」に変更されました。
CHAPTER 21
「個人単位の派遣期間制限」と「事業所単位の派遣期間制限」とは?
「個人単位の派遣期間制限」と「事業所単位の派遣期間制限」
2015年9月30日に施行された労働者派遣法の改正により、業務区分ごとの派遣期間制度は廃止となり、以下2つの派遣期間制度になりました。
(1)個人単位の期間制限
POINT
派遣先の同一の組織単位において3年を超える継続した同一の派遣労働者の受け入れはできない。
CHECK
『組織単位』とは
「名称のいかんを問わず、業務の関連性に基づいて派遣先が設定した労働者の配置の区分で
あって、配置された労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者が、当該労働者
の業務の配分及び当該業務に係る労務管理について直接の権限を有するもの」(省令)
- 課/グループ等の業務としての類似性や関連性がある組織
- その組織の長が業務の配分や労務管理上の指揮監督権限を有するもの
- 派遣先における組織の最小単位よりも一般的に大きなものを想定
(小規模の事業所においては、組織単位と組織の最小単位が一致する場合もある) - 名称にとらわれることなく、実態により判断すべきもの
(派遣先指針)
関連する厚生労働省サイトのQ&A
厚生労働省Q&A - Q1
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A
厚生労働省Q&A[第2集] - Q10
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第2集]
(2)事業所単位の期間制限
POINT1
派遣先の同一の組織単位において3年を超える継続した同一の派遣労働者の受け入れはできない。
POINT2
但し、派遣先が、事業所における派遣労働者の受入開始から3年を経過するときまでに事業所の
過半数労働組合(又は労働者過半数代表、以下「過半数労働組合等」)から意見聴取した場合に
は更に最長3年間労働者派遣を受け入れることができる。(その後さらに3年経過した場合も同様)
CHECK
『事業所』とは ⇒ 雇用保険法等雇用関係法令における概念と同様
- 工場、事業所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立していること
- 経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること
- 一定期間継続し、施設としての持続性を有すること
- 1~3等の観点から実態に即して判断すること
(派遣先指針)
関連する厚生労働省サイトのQ&A
厚生労働省Q&A[第2集] - Q6 ~ Q8
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第2集]
厚生労働省Q&A[第3集] - Q2
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第3集]
CHAPTER 22
派遣期間制限の対象外となる派遣労働者と派遣業務は?
派遣期間制度(個人単位、事業所単位)について、対象外となる派遣労働者と派遣業務が定められています。
派遣期間制限の対象外となる派遣労働者と派遣業務
以下の派遣労働者/派遣業務は、新たな2つの派遣期間制度(個人単位、事業所単位)の対象外となり、期間制限を受けません。
派遣期間制限の対象外となる労働者
(1)無期雇用の派遣労働者
派遣元と期間の定めのない雇用契約を締結している労働者
(2)60歳以上の派遣労働者
-------
※派遣労働者を無期雇用、又は60歳以上に限定して労働者派遣契約を締結することが可能
派遣期間制限の対象外となる業務
(1)日数限定業務
派遣先の通常の労働者の月の所定労働日数の半数以下、かつ、10日以下の日数で発生する業務
(2)産前産後休業・育児休業/介護休業を取得する労働者の業務
派遣先の社員が産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する場合の、その代替の業務
(3)有期プロジェクト業務
予め終期が決まっている、有期プロジェクトでの業務
CHAPTER 23
「個人単位の派遣期間制限」とは?
「個人単位の派遣期間制限」は、「派遣先の同一の組織単位において3年を超える継続した同一の派遣労働者の受け入れはできない」という期間制限です。
「個人単位の派遣期間制限」
個人単位の期間制限は以下のイメージのように運用されます。
※仮に、途中で派遣元が変更になっても、同一派遣労働者の受入期間として通算されます。
※業務内容が変更になった場合も個人単位の期間制限は通算して3年
CHECK
派遣受入可能期間を超えて労働者を受け入れた場合は、指導若しくは助言、勧告、企業名公表の対象となります。また、労働契約申込みみなし制度の適用を受けます。
関連する厚生労働省サイトのQ&A
厚生労働省Q&A[第2集] - Q12, Q13
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第2集]
厚生労働省Q&A[第3集] - Q1
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第3集]
CHAPTER 24
「事業所単位の派遣期間制限」とは?
「事業所単位の派遣期間制限」は、「派遣先の同一の事業所において3年を超える継続した労働者派遣の受け入れはできない」という期間制限です。派遣先が事業所単位の派遣期間制限を延長する場合は、過半数労働組合等の意見聴取手続きを行う必要があります。
事業所単位の派遣期間制限
新たな派遣期間制度のうち、事業所単位の期間制限は以下のイメージのように運用されます。
※派遣契約の締結に際し、派遣元への事業所単位の期間制限抵触日の通知が必要
※派遣受入可能期間を延長する場合には過半数労働組合等の意見聴取手続きが必要
※派遣受入可能期間が延長されていない場合、期間制限抵触日以降に派遣労働者を受け入れることができない。
CHECK1
派遣受入可能期間を超えて労働者を受け入れた場合は、個人単位の期間制限と同様に指導若しくは助言、勧告、企業名公表の対象となります。また、労働契約申込みみなし制度の適用を受けます。
CHECK2
「意見聴取」は「事業所単位」で行えばよく、「組織単位」や「派遣労働者単位」で行う必要はありません。
関連する厚生労働省サイトのQ&A
厚生労働省Q&A[第2集] - Q9
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第2集]
厚生労働省Q&A[第3集] - Q1
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第3集]
CHAPTER 25
いわゆる「クーリング期間」とは?
2つの派遣期間制度(個人単位、事業所単位)には、期間制限の通算期間がリセットされる空白期間(いわゆる「クーリング期間」)が定められています。いわゆる「クーリング期間」は、「3ヶ月超」(3ヶ月と1日以上)です。
いわゆる「クーリング期間」
POINT
個人単位、事業所単位の期間制限ともに、クーリング期間は「3ケ月超」(3ケ月と1日以上)です。
例1 個人単位の期間制限の場合
※3ケ月超のクーリング期間がある場合は、同一の組織単位で同一の派遣労働者を新たに3年間受け入れることが可能。
CHECK
派遣元が同一の組織単位に継続して3年間同一の派遣労働者を派遣した場合、当該派遣労働者が希望していないにもかかわらず、クーリング期間後に再度同一の組織単位に派遣をすることは、派遣労働者のキャリアアップの観点から望ましくないとされています。(派遣元指針)
例2 事業所単位の期間制限の場合
※3ケ月超のクーリング期間がある場合は、同一の事業所で新たに3年間、労働者派遣を受け入れることが可能。
CHECK
派遣先が同一事業所において3年超継続して労働者派遣を受け入れようとする場合、派遣受入可能期間の延長に係る手続を回避することを目的としてクーリング期間後に労働者派遣を受け入れることは、派遣法の趣旨に反するとされています。(派遣先指針)
CHAPTER 26
事業所単位の派遣期間制限」を延長する場合に必要な手続き(過半数労働組合等の意見聴取)とは?
「事業所単位の派遣期間制限」を、派遣先が延長しようとする場合は、事業所の期間制限に抵触する日の1ヶ月前の日までの間(意見聴取期間)に、過半数労働組合等の意見聴取手続きを行う必要があります。
事業所単位の派遣期間制限を延長する場合(意見聴取手続き)
事業所単位の期間制限を延長する場合の「意見聴取」については、以下のように定められています。
POINT1
事業所単位の期間制限を延長する場合は、事業所で派遣受入が開始された日から事業所の期間制限に抵触する最初の日の1ケ月前の日までの間(意見聴取期間)に、過半数労働組合等に意見聴取をすることが必要です。
POINT2
意見聴取において、過半数労働組合等から異議があった場合は、延長前の派遣受入可能期間が経過する日の前日までに、延長の理由、延長期間、過半数労働組合等からの意見への対応方針を説明しなければなりません。
CHECK
意見聴取、延長の理由の説明等にあたっては、派遣先は法の趣旨にのっとり誠実に行うよう努めなければなりません。
※派遣受入可能期間を延長した場合は、速やかに、派遣元に対して延長後の派遣受入可能期間に抵触する日を通知
※過半数労働組合等から異議があった場合は、派遣受入可能期間が経過する日の前日までに延長の理由等を説明
※意見聴取をせずに、派遣受入の可能期間を超えて受け入れた場合→労働契約申込みみなし制度適用
意見聴取について省令などで以下の事項が定められており、それらを踏まえ以下のようなイメージで意見聴取を行うことになります。
下記の略字はそれぞれの項目に対応します。
【法】 … 労働者派遣法 【省】 … 省令(労働者派遣法施行規則) 【指】 … 派遣先が講ずべき措置に関する指針
書面通知と情報提供
【法】意見聴取は、意見聴取期間(前述)に行うことが必要
【省】意見聴取にあたっては、(1)派遣受入可能期間を延長する事業所等、(2)延長しようとする期間、を書面により通知。
【指】意見聴取にあたっては、事業所の派遣受入開始時(派遣受入可能期間延長時)からの派遣労働者数、派遣先の無期雇用労働者数の推移に関する資料等、参考資料を提供。また、過半数組合等からの求めに応じ、部署ごとの派遣労働者数、各派遣労働者の受入期間等の情報を提供することが望ましい。
【指】意見聴取にあたっては、十分な考慮期間を設ける。
意見聴取と説明等
【法】意見聴取において、過半数労働組合等から異議があった場合は、延長前の派遣受入可能期間が経過する日の前日までに、延長の理由等を説明する。
【省】過半数労働組合等から異議があった場合は、(1)延長の理由の他に、(2)延長の期間、(3)過半数労働組合等の意見への対応方針(以下、「延長理由等」)について説明をする。
【指】過半数労働組合等から異議があった場合に、意見への対応方針を説明するにあたっては、その意見を勘案して派遣受入可能期間の延長について再検討を加えること等により、過半数労働組合等の意見を十分に尊重するよう努める。
意見聴取事項の記録保存と周知
【省】意見聴取をした場合は、以下の事項(以下、「意見聴取事項」)を、書面に記載し、延長前の派遣可能期間が経過した日から3年間保存。
(1)意見を聞いた過半数労働組合の名称又は過半数代表者の氏名
(2)過半数労働組合等に通知した日及び通知した事項
(3)過半数労働組合等から意見を聴いた日及びその意見の内容
(4)意見を聴いて延長する期間を変更したときは、その変更した期間
【省】意見聴取事項を、以下のいずれかの方法で事業所の労働者に周知。
(1)常時事業所の見やすい場所に掲示、又は備え付ける
(2)書面を労働者に公布
(3)電子計算機に備えつけられたファイル等に記録し、事業所の労働者が記録の内容を常時確認できる機器を設置
【省】過半数労働組合等から異議があった際に説明を行った場合は、(1)説明を行った日、(2)延長理由等の説明をした内容を書面に記載し、延長前の派遣可能期間が経過した日から3年間保存。
また、意見聴取事項と同じ方法で事業所の労働者に周知。
その他
【指】派遣可能期間を延長する際に過半数労働組合等から異議があった場合に、その延長期間を更に延長するにあたって、再度、過半数労働組合等から異議があったときは、その意見を十分尊重し、派遣可能期間の延長の中止又は延長する期間の短縮、派遣労働者数の減少等の対応をとることを検討したうえで、その結論をより一層丁寧に過半数労働組合等に説明。
重要
~労働者過半数代表を選出する場合の留意点について~
【省】労働者過半数代表は、以下の両方に該当するものであること。
(1)いわゆる管理監督者(労働基準法)ではないこと
(2)派遣受入可能期間の延長のための意見聴取をされる者であることを明らかにして実施される投票、挙手等の民主的な方法による手続で選出されること
※ただし、(1)に該当するものがいない場合は、(2)に該当すること
厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」には、「意見を聴取した過半数代表者が、使用者の指名等の民主的な方法により選出されたものではない場合、派遣可能期間の延長手続のための代表者選出であることを明らかにせずに選出された場合、管理監督者である場合については、事実意見聴取が行われていないものと同視できることから、労働契約申込みみなし制度(平成27年10月1日より施行)の適用があることに留意すること。」と記載されています。
関連する厚生労働省サイトのQ&A
厚生労働省Q&A - Q2, Q3
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A
厚生労働省Q&A[第2集] - Q18 ~ Q21
出典:平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第2集]
CHAPTER 27
派遣先の雇用努力義務とは?
以下の1から3までのすべてに該当する場合、派遣元から受け入れている派遣労働者(特定有期雇用派遣労働者)を、派遣先は遅滞なく雇用するよう努めなければならないと、優先雇用の努力義務が定められています。(法第40条の4)
- 派遣先の同一の組織単位の同一業務について1年以上継続して、有期雇用の派遣労働者が従事したこと※派遣元の無期雇用派遣労働者を受け入れている場合は、該当しません。
「無期雇用派遣労働者」であるか否かは、派遣法第35条に基づき派遣元が派遣先に通知することになっています。 - 派遣先が、派遣の受入れ期間終了後に、引き続き、その同一組織単位の同一業務に従事させるために労働者を雇用しようとすること
- 上1の派遣労働者が、継続して就業を希望し、派遣元から派遣法に基づく雇用安定措置の一つとして直接雇用の依頼があったこと
CHAPTER 28
派遣先の派遣労働者への社員募集情報提供義務とは?
派遣労働者の派遣先の社員化推進と雇用安定措置のために、派遣先は一定の派遣労働者に社員募集情報を提供する義務が定められています。
派遣先での正社員化推進のための正社員募集情報提供義務(派遣法第40条の5第1項)
(1) 情報提供の対象となる派遣労働者
派遣先の同一の事業所等において、1年以上の期間継続して就労している派遣労働者です。
※有期雇用派遣労働者に限らず、無期雇用派遣労働者も情報提供の対象となります。
※同一の事業所等において1年以上の継続勤務があれば対象となり、これには途中で派遣先事業所内の「組織単位」を異動した場合も含まれます。
(2) 提供(周知)すべき情報
上記 (1) に該当する情報提供の対象となる派遣労働者が就業している派遣先事業所において派遣先が募集する、正社員に関する募集情報(有期雇用の募集情報は含まれません)。
※正社員に関する募集でも、新卒の学生を対象とした全国転勤の総合職の求人情報など情報提供の対象となる派遣労働者に応募資格がないことが明白である場合は周知する必要はないとされています。(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)
(3) 情報提供(周知)の方法
- 派遣先事業所の掲示板に求人票を貼り出す
- 対象となる有期派遣労働者に直接メール等で通知する
- 派遣先から派遣元会社に募集情報を提供し、当該派遣会社を通じて対象となる有期派遣労働者に提供(周知)する
- 派遣元を通じずに募集情報を提供した際には、提供したことを派遣元にも情報提供することが望ましい。
- 周知した事項の内容については、派遣先において記録及び保存をすることが望ましい。
(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)
雇用安定措置としての社員募集情報提供義務(派遣法第40条の5第2項)
(1) 情報提供の対象となる派遣労働者
次のいずれにも該当する派遣労働者です。
1,派遣先の同一の組織単位の業務について継続して3年間派遣就労する見込みのある有期派遣労働者
※派遣元の無期雇用派遣労働者を受け入れている場合は、該当しません。
「無期雇用派遣労働者」であるか否かは、派遣法第35条に基づき派遣元が派遣先に通知することになっています。
「継続して3年間派遣就労する見込み」とは?
個人単位の期間制限の上限まで就業することが予定されていることを指し、例えば、1年単位で契約期間が更新されている労働者派遣契約について、2回目の更新をして通算契約期間が3年になった時点において、当該派遣労働者が最初の派遣契約に基づく派遣就業の開始時点から同一の組織単位で継続して就業している場合には、3年間派遣就業に従事する見込みがあると判断すること。つまり、派遣元事業主の主観的な意思ではなく、契約期間という客観的な指標により判断すること。
2,当該特定有期雇用派遣労働者について派遣元事業主から法に定める雇用安定措置の一つとして直接雇用の依頼があったこと(直接雇用については、派遣先の努力義務)
(2) 提供(周知)すべき情報
上記 (1) に該当する有期雇用派遣労働者が就業している派遣先事業所において、派遣先が募集する、正社員に関するものだけなく、パートタイム労働者、契約社員など当該派遣先事業所の全ての直接雇用労働者に関する募集情報。
※特殊な資格を必要とするなど、情報提供の対象となる派遣労働者が募集条件に該当しないことが明らかな募集情報は含まれません。(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)
※派遣期間の制限がかからない派遣労働者(派遣元が無期雇用・60歳以上)、業務に該当する場合は、この派遣先の義務が発生しません。
(3) 情報提供(周知)の方法
派遣先での正社員化推進のための正社員募集情報提供義務の(3)と同様です。
- 派遣先事業所の掲示板に求人票を貼り出す
- 対象となる有期派遣労働者に直接メール等で通知する
- 派遣先から派遣元会社に募集情報を提供し、当該派遣会社を通じて対象となる有期派遣労働者に提供(周知)する
- 派遣元を通じずに募集情報を提供した際には、提供したことを派遣元にも情報提供することが望ましい。
- 周知した事項の内容については、派遣先において記録及び保存をすることが望ましい。
(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)
CHAPTER 29
「育児介護休業法」の特例により派遣先に求められる対応とは?
育児介護休業法・男女雇用機会均等法の「マタハラ防止措置」について、派遣元のみならず、派遣先も特例的に事業主としての責任を負っているのはQ.15でご紹介した通りですが、これに加えて、育児休業・介護休業等を取得することを理由にする不利益取扱の禁止、育児介護休業法で認められている所定外・時間外労働の制限に関する不利益取扱の禁止等も、派遣先も事業主としての責を負うことになります。
CHAPTER 30
2020年4月施行の改正派遣法による、派遣労働者の待遇確保のための措置とは?
今回の労働者派遣法の改正により、派遣労働者の待遇確保のため不合理な待遇差を禁止する規程が設けられました。派遣労働者の待遇は、下記のいずれかの方式により決定します。
決定する待遇は、賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償等の全ての待遇です。尚、派遣元において下記の方式により派遣労働者の待遇を確保できるよう、派遣先には、派遣料金についての配慮義務が課せられました(派遣法第26条第11項)。
■派遣先均等・均衡方式(派遣法第30条の3)
派遣先に雇用される通常の労働者(無期雇用フルタイム社員)との間で均等・均衡の待遇を確保する。
■労使協定方式(派遣法第30条の4第1項)*
派遣元において、一定の要件を満たす労使協定により待遇を確保する。
*派遣元において、過半数労働組合又は(過半数労働組合が派遣元にない場合は)過半数代表者との労使協定の締結が必要になります
<関連参照>
CHAPTER 31
『派遣先均等・均衡方式』の待遇確保の措置とは?
★ポイント:派遣労働者の待遇が派遣先に雇用される通常の労働者との間で、均等・均衡になるよう、派遣元が派遣労働者の待遇を決定します。
『均等待遇』と『均衡待遇』とは
均等待遇とは?(差別的取扱いの禁止)
派遣労働者の待遇決定にあたって、派遣労働者と比較対象となる派遣先の通常の労働者との間で、
- 「職務内容(業務の内容及び責任の程度)」
- 「職務内容・配置の変更範囲」
が同じ場合は、同じ方法で待遇を決定する必要があります。
均衡待遇とは?(不合理な待遇差の禁止)
派遣労働者の待遇について、派遣労働者と比較対象となる派遣先の通常の労働者との間で、
- 「職務内容(業務の内容及び責任の程度)」
- 「職務内容・配置の変更範囲」
- 「その他の事情」
に違いがある場合は、その違いに応じた範囲内で待遇を決定する必要があります。
『比較対象労働者』とは
派遣先は、1~6の優先順位により比較対象労働者を選定します。
- 「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
- 「職務の内容」が同じ通常の労働者
- 「業務の内容」または「責任の程度」が同じ通常の労働者
- 「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
- 1~4に相当する短時間・有期雇用労働者※1※1パートタイム・有期雇用労働法等に基づき、派遣先の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されている者に限ります。
- 派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者※2※2当該労働者の待遇内容について就業規則に定められており、かつ派遣先の通常の労働者との間で適切な待遇が確保されている者に限ります。
派遣先の比較対象労働者の『待遇に関する情報』の提供方法と保管義務
派遣先は、派遣契約を締結するにあたっては、あらかじめ派遣元に対して、派遣労働者が従事する業務ごとに、以下1~5の比較対象労働者の『待遇に関する情報』を提供しなければなりません(派遣法第26条第7項、派遣法施行規則第24条の4第1号)。
提供は、書面の交付、ファクシミリ送信又は電子メール等の送信で行わなければなりません。また、派遣先は、書面等の写しを、派遣契約が終了した日から起算して3 年間経過する日まで保存しなければなりません。尚、『待遇に関する情報』に変更があった場合は、遅滞なく派遣元に変更内容の情報を通知しなればなりません。
(派遣先の比較対象労働者の『待遇に関する情報』の提供内容)
- 職務内容および配置の変更の範囲、雇用形態
- その比較対象労働者を選定した理由
- 待遇(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合はその旨)
- 待遇それぞれの性質および目的
- 待遇のそれぞれの決定にあたり考慮した事項
<関連参照>
CHAPTER 32
『労使協定方式』の待遇確保の措置とは?
★ポイント:派遣元が一定要件を満たす労使協定を締結し、派遣労働者の待遇を決定します。
労使協定による賃金の決定方法とは
1.賃金(基本給・賞与・手当等、通勤手当、退職金)
厚生労働省の通達による、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む地域において、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金額」と同等以上となるよう派遣労働者の賃金を決定します。
職務の内容に密接に関係する賃金は、職務の内容、職務の成果、能力又はその他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善されるものであることとされています。
2.賃金を除く待遇
比較対象となる派遣元の通常の労働者との間で均等・均衡待遇が確保されるよう派遣労働者の待遇を決定します。
※ただし、派遣法第40条第2項の一部の教育訓練の実施、及び同条第3項の派遣先における福利厚生施設の利用についての措置は、派遣先において講じなければなりません。詳しくは、Q33をご確認ください。
『待遇に関する情報』の提供方法と保管義務
派遣先は、派遣契約を締結するにあたっては、あらかじめ派遣元に対して、派遣労働者が従事する業務ごとに、『待遇に関する情報』を提供しなければなりません(派遣法第26条第7項、派遣法施行規則第24条の4第1号)。
提供は、書面の交付、ファクシミリ送信又は電子メール等の送信で行わなければなりません。また、派遣先は、書面等の写しを、派遣契約が終了した日から起算して3 年間経過する日まで保存しなければなりません。尚、待遇情報に変更があった場合はその内容を派遣元に提供しなければなりません。
★ポイント:2020年4月1日施行の労働者派遣法の改正により、派遣契約に、派遣労働者を「協定対象派遣労働者」に限定するか否かを定めることになりました。
派遣契約に、「協定対象派遣労働者」に限定することを定める場合、派遣先が派遣元に提供する『待遇に関する情報』の内容は、以下1、2のとおりとなります。(派遣法第26条第7項、派遣法施行規則第24条の4第2号)。
(『待遇に関する情報』の提供内容)
- 派遣先が派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者に対して行う業務遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の内容(当該教育訓練がない場合は、その旨)
- 派遣先が、派遣先に雇用される労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設(「給食施設」、「休憩室」、及び「更衣室」)の内容(当該福利厚生施設がない場合には、その旨)と、福利厚生施設それぞれの利用の機会の付与の有無及び利用時間等の具体的な内容
<関連参照>
CHAPTER 33
派遣先による均衡待遇の確保と適正な就業環境の確保のための措置(義務と配慮義務)とは?
派遣労働者と派遣先の労働者との均等待遇推進と、派遣労働者の適正な就業環境を維持するための措置が定められています。
義務
教育訓練・能力開発
派遣元からの求めに応じ、派遣労働者の業務と同種の業務に従事する派遣先労働者が従事する業務の遂行に必要な能力付与のための教育訓練については、派遣労働者に対しても実施する等必要な措置を講じなければならない(すでに派遣労働者が必要な能力を有している場合、すでに派遣元で同様の訓練が行われている場合は除く)。
福利厚生施設1(給食施設、休憩室、更衣室)
派遣先労働者が利用している福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、派遣労働者に対しても利用の機会を与えなければならない。
配慮義務
福利厚生施設2(1の施設を除く)
派遣先が設置及び運営し、派遣先労働者が利用している、物品販売所、病院、浴場、理容室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設等の施設については、派遣労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮。
職務遂行状況等の情報提供
派遣元の教育訓練、キャリア・コンサルティング等が適切に講じられるようにするため、派遣元の求めに応じ、派遣労働者の業務遂行状況その他の情報で、派遣元の教育訓練、キャリア・コンサルティング等に必要なものを提供する等必要な協力をするよう配慮。
★ポイント
- 配慮義務とは、目的の実現に向け、具体的に取り組むことが求められ、努力義務よりも強い責務が課されるものです。
- 派遣先は、派遣料金について、派遣元が、派遣先に雇用される通常の労働者との間の均等・均衡待遇の確保(派遣先均等・均衡方式)及び一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇確保(労使協定方式)のための措置を遵守できるよう配慮しなければならない、とされています(派遣法第26条第11項)。
- 派遣先は、派遣料金の決定にあたっては、派遣労働者が従事する業務の内容、要求する技術水準の変化等を勘案するよう努めること、とされています(派遣先指針)。