派遣社員の社会保険・有給休暇はどうなる?加入条件と取得ルール|よくある誤解も解説

派遣社員として働く前に、「社会保険ってどうなるんだろう...」「有給休暇は取れるのかな...」と不安に感じている方も多いはず。派遣と正社員では、社会保険や有給の仕組みが異なるため、事前に理解しておくことが大切です。この記事では、派遣社員の社会保険と有給休暇について、加入条件から取得ルールまでをわかりやすく解説します。法制度は複雑なので、「一般的には」という前置きで、よくあるケースをお伝えしますね。
派遣社員の社会保険について
社会保険とは
ひとくちに「社会保険」といっても、実際には次のような制度をまとめて指しています。
- 健康保険:病気や怪我のときの医療費を補助。医療費が3割負担で済むのはこのため
- 厚生年金保険:将来の年金受給のための保険。毎月の給与から天引きされ、会社も同額を負担
- 雇用保険:失業時の失業給付や教育訓練給付を受けるための保険
- 労災保険:仕事中や通勤中の怪我などに備える保険。保険料は全額会社が負担し、働く人は雇用形態を問わず対象になります
このうち、加入するかどうかで手取りや将来の年金額が変わってくるのが、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つです。
POINT
派遣社員でも、条件を満たせば正社員と同じ社会保険に加入できます。「派遣だから保険が無い」わけではなく、加入のタイミングや条件が異なるだけなんです。
派遣社員が社会保険に加入する条件
ここがいちばん分かりにくいところなので、順番に整理しますね。派遣社員の場合、社会保険に入るのは派遣先ではなく、雇用主である派遣会社の保険です。
健康保険・厚生年金保険は、一般的に次のどちらかにあてはまると加入対象になります。
- 原則(フルタイムに近い働き方):1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、その職場の正社員のおおむね4分の3以上あること。この場合、派遣会社の規模に関係なく加入対象です
- 4分の3に満たない短時間勤務の場合:週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が一定額(8.8万円)以上、2か月を超えて働く見込みがある、学生ではない、といった条件をすべて満たし、かつ勤務先(派遣会社)の従業員数が一定規模以上のときに加入対象になります。この企業規模の基準は段階的に引き下げられてきており、2024年10月からは従業員51人以上の会社が対象です
雇用保険は上記とは別の基準で、一般的には週20時間以上の勤務で、31日以上の雇用見込みがあれば加入対象になります。
ここは要チェック
社会保険の適用範囲は法改正で少しずつ広がってきており、今後さらに条件が変わる可能性があります。ここに書いた基準はあくまで一般的な考え方なので、自分が加入対象になるかどうかは、契約内容をもとに派遣会社に必ず確認してくださいね。
なお、求人票に「社会保険完備」と書かれていても、それは制度が用意されているという意味であって、自分の勤務条件で必ず加入対象になるとは限りません。気になる場合は応募時に聞いておくと安心ですよ。
派遣社員が加入した場合の給与への影響
社会保険に加入すると、毎月の給与から保険料が天引きされます。
- 天引きされる保険料:健康保険(給与の約4~5%)+ 厚生年金保険(給与の約9%)= 合計で給与の約13~14%が毎月控除されます
- 差し引かれる金額のイメージ:時給1,200円で月154時間働いた場合、支給額は約184,800円。ここから社会保険料として2万円台が引かれる計算になります。実際の手取りは、さらに所得税・住民税が引かれた額になります
- メリット:保険料が天引きされる代わり、会社側も同額を負担しており、病気や失業時のセーフティネットが得られます
社会保険に加入できない場合の選択肢
短期派遣や小規模派遣会社の場合、社会保険加入対象外のことがあります。その場合の選択肢は以下の通りです。
- 国民健康保険・国民年金に自分で加入:勤務先の健康保険に加入できない場合、市区町村の国民健康保険と国民年金に自分で加入することになります。保険料は自治体や所得によって異なります
- 家族の扶養に入る:収入などの条件を満たせば、家族の健康保険の扶養に入る選択肢もあります
- 勤務条件を見直す:加入を希望するなら、契約更新のタイミングで勤務時間や日数を増やせないか相談してみるのも一つの方法です
ここは要チェック
「2社かけもちして勤務時間を足せば加入できる」と考える方がいますが、健康保険・厚生年金の加入は勤務先ごとに判断されるのが原則です。単純に合算して要件を満たす、という扱いにはならないので注意してくださいね。
派遣社員の有給休暇について
有給休暇とは
有給休暇は、休んでも給与が支払われる休みのこと。派遣社員でも、条件を満たせば取得できます。
派遣社員が有給休暇を取得する条件
派遣社員の有給休暇は、以下の条件で付与されます。
- 雇入れの日から6か月以上の継続勤務:ここで数えるのは雇用主である派遣会社との勤続期間です。派遣先が途中で変わっても、同じ派遣会社で働き続けていれば通算されます
- 出勤率8割以上:その期間の全労働日のうち、8割以上出勤していることが条件です
- 雇用形態による区別はなし:派遣社員か正社員かを問わず、労働基準法上の条件は同じです。派遣だから条件が厳しい、ということはありません
なお、週の勤務日数が少ない働き方の場合は、日数に応じて付与される有給が少なくなる仕組み(比例付与)があります。
POINT
有給休暇は「派遣会社から付与される」のではなく、労働基準法で定められた「労働者の権利」です。ですので、派遣会社が「うちの派遣社員には有給がない」と言うのは法律違反。6か月以上勤続で80%以上出勤していれば、必ず付与される権利なんですよ。
有給休暇の付与日数
フルタイムで働く派遣社員の場合、以下の日数が付与されます。
- 6か月勤続時点:10日間の有給休暇が付与される
- 1年6か月勤続時点:11日間に増える
- 2年6か月勤続時点:12日間に増える
- 3年6か月勤続時点:14日間に増える
- 4年6か月勤続時点:16日間に増える
- 5年6か月勤続時点:18日間に増える
- 6年6か月勤続時点以降:20日間に達し、それ以上は増えない(上限)
有給休暇の取得方法と手続き
有給休暇を使いたいときの流れです。
- 派遣会社または派遣先に連絡:「有給休暇を使いたいのですが」と伝える。一般的には、派遣先の上司に伝えて、派遣会社にも報告するルートが多い
- 取得申請書の提出:派遣会社によっては書面での申請が必要。その場合は、指定のフォームに日付を記入して提出
- 承認:通常は「有給休暇の利用申請」は企業側が拒否できない権利のため、承認されないことはほぼありません。ただし「この日は忙しいから別の日にしてほしい」と調整を求められることはあります
- 給与に反映:有給を使った日も、通常の給与が支払われます
有給休暇の時効と消滅ルール
有給休暇には有効期限があります。
- 2年で時効消滅:付与された日から2年が経過すると、未使用の有給休暇は消滅します。例えば2024年4月1日に付与された有給は、2026年3月31日までに使わないとなくなる計算です
- 計画的付与制度:会社と労働者側の協定(労使協定)を結んだうえで、「この期間は全員で有給を使う」と計画的に割り当てる仕組みです。ただし全部を割り当てられるわけではなく、5日分は本人が自由に使える分として必ず残されます
- 派遣会社を変わったとき:同じ派遣会社で働き続けている限り、派遣先が変わっても有給は引き継がれます。一方、派遣会社そのものを変えると、勤続期間は新しい会社で最初から数え直しになり、それまでの未使用分も使えなくなります
ここは要チェック
有給休暇が「自動的に消滅する」ことを知らない方も多いです。勤続2年に達したら、「あと1年で消滅する有給がいくつあるか」を確認し、早めに使用計画を立てることが大切ですよ。
有給休暇の取得義務(年間5日)
2019年4月から、企業に対して「従業員に年間5日の有給を取得させること」が義務化されました。
- 対象になる人:有給が年10日以上付与される人が対象です。派遣社員も条件を満たせば当然含まれます
- 取らせなかった場合:義務を果たさなかった会社側が罰則の対象になります。働く側が罰せられることはありません
- 会社から取得日を指定されることも:本人が自分から取得しないまま期限が近づくと、会社が本人の希望を聞いたうえで取得日を指定できる仕組みになっています。これは「有給を減らされる」のではなく、年5日を確実に取ってもらうための決まりです
派遣の社会保険と有給について「よくある誤解」
誤解1:「派遣だから社会保険がない」
これは間違いです。条件を満たせば、派遣社員でも社会保険に加入します。
誤解2:「派遣だから有給がない」
これも間違いです。6か月以上勤続で80%以上出勤していれば、有給休暇は必ず付与されます。
誤解3:「社会保険に入ると、手取りが大きく減る」
確かに保険料は天引きされますが、その代わり病気や失業時の保障が得られます。「給与が減る」と捉えるより「保障が増える」と考えた方が前向きです。
誤解4:「派遣先が変わると、有給がリセットされる」
派遣先が変わっても、派遣会社が同じなら勤続年数はリセットされません。ただし、派遣会社を完全に変わる場合は、新しい派遣会社で改めてカウントが始まります。
誤解5:「有給は『お願い』ベースで、拒否されることもある」
これは半分正解で、半分間違いです。会社が「この日は業務が忙しいから別の日にしてほしい」と日程調整を求めることはできます。ただし、「有給を一切取らせない」「有給を拒否する」ことは違法です。
POINT
社会保険と有給休暇は「派遣社員の権利」です。派遣会社が「制度がない」と言っても、法律で定められた権利は変わりません。もし疑問に思ったら、派遣会社に「法律では〇〇と定められていますが」と確認することをお勧めします。
派遣としての安定性を高めるために
社会保険と有給休暇の制度を理解することで、派遣社員としての不安は大きく減ります。
- 応募前に確認を:求人に応募する前に、社会保険加入の有無、有給の制度について派遣会社に質問する
- 入社時に契約内容をチェック:雇用契約書に社会保険や有給についての記載があるか、細かい字まで確認する
- 疑問は遠慮なく質問を:わかりにくいことは、派遣会社の担当者に何度でも聞いて問題ありません。理解した上で仕事を始めるのが安心です
派遣社員としての権利を活かそう
派遣という働き方は、一見すると正社員より不安定に思えるかもしれません。でも、社会保険と有給休暇という「当たり前の権利」は、派遣でも変わりません。これらの制度をしっかり理解して、安心して仕事に臨んでくださいね。
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